神の手を持つ時計製造者【独立時計師】を知っていますか?
皆さんは独立時計師と言う言葉を聞いた事がありますか?
高級時計について調べていると、度々目にする「独立時計師」とは一体何者なんでしょうか?
今回は「独立時計師」について深堀です!
独立時計師とは?
高級時計に関して調べていると度々、目にする「独立時計師」
一体何なのでしょうか?
「独立時計師」とは、企業やブランドに属さず個人で機械式の時計製造を行っている、卓越した時計製造の技術を持った時計製造者の事です
日本では主に独立時計師アカデミーに属している時計製造者の事を指しています
独立時計師アカデミーとは、1985年スイスで設立された機械式時計の製造技術を持った職人が属する集団の事で
“Académie Horlogère Des Créateurs Indépendant”通称『AHCI』と呼ばれています
2022年9月現在では世界中で35人の機械式時計製造者が所属しています
時計製造に携わる方の多くは企業やブランドに属している為、個人で1から時計製造を行っている人がいかに少ないか分かりますね
しかも、このAHCIに属するのは非常に狭き門と言われており、ここに属している時計師の方は1から一人で複雑機構を搭載した腕時計を作り上げる事から「神の手を持つ」と称される事もあるほどです
AHCIのメンバー
1985年スヴェン・アンデルセン氏やヴィンセント・カラブレーゼ氏が中心となり設立されました
スヴェン・アンデルセン氏は元々PATEK PHILIPPE(パテック・フィリップ)の複雑機構部門でその腕を磨いた人物で1984年に独立、「Andersen Geneve (アンデルセン・ジュネーヴ)」を立ち上げて数々の複雑機構を発表しています
ヴィンセント・カラブレーゼ氏は初代AHCIの初代会長であり、2004年には横尾忠則とのコラボ時計「タイム・ウェブ」を発表したことで知られています
AHCIのメンバーになる為には、先ずメンバー2人からの推薦を受けなければなりません
世界中に35人しかいないメンバーの内2人からの推薦・・
その段階で相当な狭き門なのが窺えます
その後世界的な時計の見本市においてAHCIのブースで自作時計を発表
その後問題がなければ、AHCI準会員として登録されるらしいです
この時点でまだ“準”会員・・
準会員になった翌年から、2年続けて新作を発表
その後AHCI総会において出席者全員の賛同を得られたら正会員として認められるそうです
聞いている限りでは果てしない道のりの様な気がしますね
しかし、このAHCIメンバーには過去フランクミュラー氏が在籍していた事も有名ですし
天才時計技師と名高いフランソワ・ポール・ジュルヌ氏は今現在も在籍しています
他にもフィリップ・デュフール(デュフォー)氏、ドイツの高級時計ブランド“ラング&ハイネ”の創設者マルコ・ラング氏等が正会員として在籍しています
この狭き門であるAHCI正会員35人の中には、なんと日本の方が3名も在籍しているんです!
日本が誇る独立時計師
2013年日本人として初めてAHCIのメンバーとなった「菊野昌宏」さん
菊野さんが注目を集めたのは不定時法の「和時計」
一刻の長さが季節や昼と夜によって変化する「不定時法」
インデックス部分が稼働する事によって時刻を刻んでいます
不思議で美しい時計です
改良を重ね2016年に発表された和時計「暁鐘」
日本人にとって郷愁感を呼び起こすような、ノスタルジックで美しい時計です
朔(新月)望(満月)と名付けられたこの時計はその名の通りムーンフェイズ機能が搭載されています
菊野さんの作品は日本人らしさを出した芸術作品のような美しさを持っています
しかし、技術力も確かで、朔望に搭載されているムーンフェイズ機能
誤差が累積し一日分のズレになるのは122年後だそうそうです
この、精密さ・・、凄いの一言に尽きますね
2015年正会員となった「浅岡肇」さん
元々デザイナーであった浅岡さんの代表作「TSUNAMI」
時計のデザインをしたことをきっかけに時計製造の道に進まれたそうですが、別の道に進み更に才能を開花させるには大変な努力と情熱が必要だった事と思います
project-T トゥールビヨン
Chronograph
デザイナーであった浅岡さんの時計達はメカニックで躍動的
外装部分に留まらずムーブメントの美しさも圧巻です
このクロノグラフ時計が全ての部品が連動しながら可動するところを想像してみて下さい
動く芸術です
そして2022年の今年、新たにAHCIメンバーとなった「牧原大造」さん
日本の伝統工芸「江戸切子」を取り入れた「菊つなぎ紋 桜」
文字盤に施された江戸切子仕様の菊つなぎ紋の繊細さは見ているだけでため息が出るほど
うっすらと機構が透けているところもたまりません・・
何となくワードとして「独立時計師」と言う肩書の人がいるんだな・・
くらいの認識しかなかったのですが
今回、少しですが「独立時計師」
そして、日本人でありながらそのメンバーとなった「菊野さん」「浅岡さん」「牧原さん」の事を知り
その技術力と感性、情熱の全てに尊敬です・・
「時計が好きだから」
きっと最初はここから始まるのだと思います
でも、ここまで辿り着くには想像をはるかに超える困難と努力が要ったのだろうな、と
私は想像する事しか出来ませんが
作品の素晴らしさは伝わります
現在、独立時計師の創り出す時計はどれも非常に入手困難となっています
機会があれば是非!実際に目にしてみたいですね